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予防接種に関した病気の説明
ポリオ
(1)ポリオの病気の説明
「小児マヒ」と呼ばれ、わが国でも1960年代前半までは流行を繰り返していましたが、予防接種の効果で現在は国内での自然感染は報告されていません。しかし、現在でもインド、アフリカなどではポリオの流行がありますから、これらの地域で日本人がポリオに感染したり、日本にポリオウイルスが入ってくる可能性がある訳です。ですから、予防のためにワクチンを飲んで免疫をつけておきましょう。ポリオウイルスはヒトからヒトヘ感染します。感染したヒトの便中に排泄されたウイルスが口から入りのど又は腸に感染します。感染したウイルスは3〜35日(平均7〜14日)腸の中で増えます。しかし、ほとんどの場合は、症状が出ず、一生抵抗力(免疫)が得られます。症状が出る脊髄麻痺の場合、ウイルスが血液を介して脳・脊髄へ感染し、麻痺を起こします。ポリオウイルスに感染すると100人中5〜10人が、カゼ様の嘔吐症状を呈し、発熱し、続いて頭痛、激しい嘔吐があらわれ麻痺を起こします。一部の人には、その麻痺が永久に残ります。呼吸困難により死亡する事もあります。感染の合併症として麻痺の発生率は1000〜2000人に1人ですが、麻痺患者が1人発生したときには、その周りに100人以上の感染者がいるといわれています。
(2)ボリオワクチン(経口生ワクチン)
I、II、III型の3つタイプのポリオワクチンウイルスが混ざっています。飲むことによりそれぞれの型の抵抗力(免疫)ができます。しかし、1回飲むだけでは1つか2つの型だけの抵抗力(免疫)しかできない事もありますので、2回飲むことが決められています。それにより前回抵抗力(免疫)ができなかった型に対しては抵抗力(免疫)ができて予防体制ができ上がります。ひどい下痢をしていると、ワクチンの効果が弱まるので延期しましょう。
(3)ワクチンの副反応
ワクチンに使われているウイルスは弱毒化されており安全ですが、服用後体内で増えますので、450万人以上の投与に1人程度の極めてまれな頻度で、ウイルスが脳・脊髄に達して麻痺を生ずる事があります。またワクチン投与を受けた人からは15〜37日間(平均26日間)にわたってウイルスが便中に排泄されます。このウイルスがワクチンを受けていない人に感染して、麻痺をひき起こす事があります。その頻度は一定していませんが550万人に1人程度でまれなものです。
ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)
(1)ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)の病気の説明
ジフテリア(D)
ジフテリア菌の飛沫感染によって起こります。1981年にワクチンが導入された事により患者の発生は年間に1〜2人程度です。ジフテリアは感染しても症状が出るのは10%程度で、残りの人は症状が出ずに保菌者となります。しかし、他の人に感染させる事もあります。感染は主にのどですが、鼻にも感染し、高熱、のどの痛み、犬吠様の咳、嘔吐などです。小児の場合、のどの腫れによって呼吸ができなくなり窒息死する事もあります。また発病2〜3週間後に菌の出す毒素により心筋の障害や神経麻痺を起こす事があります。日本国内では現在、大規模な流行はみられなくなりましたが海外では流行している国もあります。
百日咳(P)
百日咳菌の飛沫感染により起こります。1956年から百日咳ワクチンの接種がはじまって以来、患者数は減少してきています。当時は菌体の入ったワクチンでしたが、1981年以降は副反応の少ない精製ワクチンを使っています。百日咳は普通のカゼのような症状ではじまります。続いて咳がひどくなり、顔を真っ赤にして連続性に咳込むようになります。咳のあと急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱は出ません。乳幼児は咳で呼吸ができず、くちびるが青くなったり(チアノーゼ)けいれんを起こす事があります。肺炎や脳症などの重い合併症を起こす事もあります。乳児では命を落とす事もあります。1970年代後半に予防接種率が低下した際、百日咳患者が多数出て、113名の死者を出しました。このようなことを繰り返さないためにもぜひ予防接種を受けましょう。
破傷風(T)
破傷風菌はヒトからヒトヘ感染するのではなく、土の中にひそんでいて傷口からヒトヘ感染します。傷口から菌が入り体の中で増えますと、菌の出す毒素のために、口が開かなくなったり、けいれんを起こしたり、死亡することもあります。患者の半数は自分や周りの人では気がつかない程度の軽い刺し傷が原因です。日本中どこでも土中に菌はいますので、感染する機会は常にあります。またお母さんが抵抗力(免疫)をもっていれば出産した時、新生児の破傷風も防げますので、ぜひ予防接種を受けておきましょう。
(2)DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)三種混合ワクチン
1期として初回接種3回(3〜8週間間隔で)、追加接種は1回(初回接種3回終了後1年〜1年半までに)受けるようにしましょう。また、2期として11、12歳時(通常6年生)にDT(ジフテリア・破傷風)二種混合ワクチンで追加接種を1回します。回数が多いので、接種もれに注意しましょう。確実な免疫をつくるには、決められたとおりに受けることが大切ですが、万一間隔があいてしまった場合でも、その接種状況によりはじめからやり直しでは無く続けてできる事がありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。
(3)DPTワクチンの副反応
1981年に百日咳ワクチンが改良されて以来、日本のワクチンは副反応の少ない安全なワクチンになっています。現在の副反応は注射部位発赤(あかみ)、腫脹(はれ)、硬結(しこり)などの局所反応が主で、頻度に程度の差はありますが、初回接種1回目のあと、7日目までに14.O%、追加接種後7日目まで41.5%です。なお、硬結(しこり)は少しずつ小さくなりますが、数ヵ月残ることがあります。特に過敏な子で肘をこえて上腕全体がはれる場合が少数ありますが、これも湿布などで軽快します。通常高熱は出ませんが、接種後24時間以内に37.5℃以上になった子が1.4%あります。重い副反応はなくても、機嫌が悪くなったり、はれが目立つときなどは医師に連絡してご相談ください。
麻しん(はしか)
(1)麻しん(はしか)の病気の説明
麻しんウイルスの空気感染によって起こる病気です。感染力が強くワクチンを受けないと、必ずかかる重い病気です。発熱、せき、鼻汁、めやに、発疹を主症状とします。最初3〜4日間は38℃前後の熱で、一時おさまりかけたかと思うとまた39〜40℃の高熱と発疹が出てきます。高熱は3〜4日で解熱し、次第に発疹も消失します。しばらく色素沈着が残ります。主な合併症としては、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎があります。麻しん(はしか)にかかった人100人中、中耳炎は7〜9人、肺炎は1〜6人に合併します。脳炎は1000人に2人の割合で発生がみられます。また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という慢性に経過する脳炎は約5万人に1人発生します。また、麻しん(はしか)にかかった人は1000人に1人の割合で死亡します。わが国では現在でも年間約50人の子がはしかで命を落としています。予防接種率の高い国では麻しんの流行がみられていません。日本は麻しん(はしか)の予防接種率が低く、先進国の中で飛び抜けて高い発生率になっています。そのため麻しん(はしか)の輸出国と呼ばれています。ぜひ予防接種を受けましょう。
(2)麻しん(はしか)ワクチン(弱毒生ワクチン)
麻しんウイルスを弱毒化してつくったワクチンです。1歳から2歳の間に麻しんにかかる子どもが多くなっていますので、1歳になったらすぐに受けるように努めましょう。遅くなった場合でも保育園、幼稚園などの集団生活に入るまでには、他の人にうつさないためにも必ず受けておきましょう。はしかが流行している地域で、1歳前に保育園に入園させる場合には、9ヵ月から麻しん(はしか)ワクチンを任意で受ける方法もありますので医師とご相談ください。接種した場合、お母さんからの抵抗力(免疫)の影響でワクチンの効果が不十分な場合もありますので、定期接種の接種期間に、もう一度受け直してください。ガンマグロブリンの注射を受けたことがある人は、3ヵ月以上過ぎてから、川崎病などでガンマグロブリン大量療法を受けたことがある人は6ヵ月以上過ぎてから麻しんの予防接種を受けてください(ガンマグロブリンは、血液製剤の一種でA型肝炎等の感染症の予防目的や重症の感染症の治療目的などで注射することがあります)。
(3)ワクチンの副反応
このワクチンは生ワクチンですからウイルスが体内で増えるため、接種後5〜14日に5.3%に37.5℃以上38.4℃未満の発熱、8.1%に38.5℃以上の発熱、5.9%に麻しん様の発疹が認められることがあります。通常は1〜2日で消失します。またまれに熱性けいれんが起こります。ごくまれ(100〜150万人に1人以下)に脳炎の発生も報告されています。
風しん(三日ばしか)
(1)風しんの病気の説明
風しんウイルスの飛沫感染によって起こる病気です。潜伏期間は2〜3週間です。軽いカゼ症状ではじまり、発疹、発熱、後頸部リンパ節腫脹などが主症状です。そのほか眼球結膜の充血もみられます。発疹も熱も約3日間でなおりますので「三日ばしか」とも呼ばれることがあります。合併症として、関節痛、血小板減少性紫斑病、脳炎などが報告されています。血小板減少性紫斑病は患者3000人に1人、脳炎は患者6000人に1人くらいです。大人になってからかかると重症になります。妊婦が妊娠早期にかかりますと、先天性風しん症候群と呼ばれる病気をもった児(心臓病、白内障、聴力障害など)が生まれる可能性が高くなりますから、風しんワクチンを受けていない人は、妊娠前に予防接種を受けておくことが大切です。
(2)風しん(三日ばしか)ワクチン(弱毒生ワクチン)
風しんウイルスを弱毒化してつくったワクチンです。2〜3歳になると、かかる子どもが急に増えますので、麻しんワクチンが終わった後、続けて受けるようにしましょう。男の子も女の子も受けましょう。お母さんが次の子どもを妊娠中であっても、お子さんは受けられます。
(3)ワクチンの副反応
風しんワクチンも生ワクチンですから、麻しん(はしか)と同じようにウイルスが体内で増えます。小児では、接種後5〜14日に1.9%に37.5℃以上38.4℃未満の発熱、2.6%に38.5℃以上の発熱、発疹が1.3%、リンパ節腫脹が0.6%認められます。ワクチン接種を受けた人から周りの人にうつることはありません。
日本脳炎
(1)日本脳炎の病気の説明
日本脳炎ウイルスの感染で起こります。ヒトから直接ではなく、ブタの体内で増えたウイルスが蚊によって媒介されうつります。7〜10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎をお越す事があります。流行は西日本地域が中心ですが、ウイルスは北海道など一部を除く日本全体に分布しています。この地域で飼育されているブタの流行は毎年6月からはじまり10月まで続きますが、この間に80%以上のブタが感染しています。以前は小児、学童に発生していましたが、予防接種の普及などで減少し、最近では予防接種を受けていない高齢者を中心に発生しています。感染者のうち1000〜5000人に1人が脳炎を発症します。脳炎のほか髄膜炎や夏かぜ様の症状で終わる人もあります。脳炎にかかった時の死亡率は約15%ですが、神経の後遺症を残す人が約50%あります。ぜひ予防接種を受けておきましょう。
(2)日本脳炎ワクチン(不活化ワクチン)
日本脳炎ウイルスを殺し(不活化)、精製したものです。北海道を除く日本全国には日本脳炎ウイルスに感染したブタとウイルスを運ぷ蚊(コガタアカイエカ)がたくさんいます。乳幼児での流行は抑えられているので、3歳を過ぎたら受けましょう。確実な免疫をつくるには、決められたとおりに受けることが大切ですが、万一間隔があいてしまった場合でも、その接種状況によりはじめからやり直しでは無く続けてできる事がありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。
(3)日本脳炎ワクチンの副反応
副反応としては2日以内に37.5℃以上の発熱が接種を受けた人1.5%にみられています。注射局所の発赤(あかみ)、腫脹(はれ)は接種を受けた人100人中10人程度です。発疹も1.1%にみられ、圧痛もまれにみられます。
結核
(1)結核の病気の説明
わが国の結核はかなり減少しましたが、まだ3万人を超える患者が毎年発生しており、大人から子どもへ感染することも少なくありません。また結核に対する抵抗力はお母さんからもらうことができませんので、生まれたばかりの赤ちゃんもかかる心配があります。乳幼児は結核に対する抵抗力が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になることもあり、重い後遺症を残すことになります。ですからBCG接種を受けておきましょう。これで結核はおよそ1/4に減らせるのです。
(2)BCGワクチン
BCGは牛型結核菌を弱めた生ワクチンです。BCGの接種方法は管針法といってスタンプ方式で上腕の2カ所に押しつけて接種します。それ以外の場所に接種するとケロイドなどの副作用が出ることがありますので、絶対に避けなければなりません。接種したところは、日陰で乾燥させてください。10分程度で乾きます。
(3)BCGの副反応
接種後10日頃に接種局所に赤いポツポツができ一部に小さくうみをもったりします。この反応は接種後4週間頃に最も強くなりますが、その後はかさぶたができて接種後3ヵ月までにはなおり、小さなきずあとが残るだけになります。これは異常反応ではなく、BCGがついた証拠です。包帯をしたり、バンソウコウをはったりしないで、そのまま普通に清潔を保ってください。自然になおります。ただし、接種後3ヵ月を過ぎても接種のあとがジクジクしているようなときは医師に診てもらってください。副反応としては接種をした側のわきの下のリンパ節がまれに腫れることがあります。通常放置して様子をみてかまいませんが、ときにただれたり、大変大きく腫れたり、まれに化膿して自然に破れてうみが出ることがあります。その場合には医師に診てもらってください。